揺れる
 そう思ったら忘れることが妙に恐くなった。



 私を作り上げた記憶は私が生きることによって、身を潜めてしまったり消えてしまったりする。



 そう思うと踏み出した一歩がどうにも重くなる。



 後ろに下がってみようかな。



 そう思って後ろに足を向けようとしても、何かに押さえ付けられて動きやしない。



 どうしようかと悩んだ結果、私はまた一歩、誰かに背中を押されるように足を踏み出した。



 どうすれば忘れないでいられるのかな。



 私はそう悩む日々が続いたはずなのに、いつしかその悩みもふと忘れてしまった。
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