揺れる
 ある日、幼い頃の友人に再会した。



 まだ、ただ闇雲走ることが疲れなかったくらいの幼い頃。



 その友人が不意に、私を見て変わったと言った。



 私は不思議に思い、自分のどこがどう変わったのか柔らかく訊ねた。



 そんな問いに友人は眉間にしわを寄せて、ただ変わった気がすると、まるで具体性のないことを言った。


 私はまた悩んだ。



 昔の私はどんな人だったのかな。



 溌剌としていたのだろうか?それとも物静かであったのだろうか?



 私は私であって、何も変わらないはずなのに。



 でも変わったと他人には見えている。



 どんなに思い出そうとしても、昔の私は姿を隠して出てこようとはしなかった。




 知らぬ間に私は、遠い日に私自身という大きな忘れものをしてしまっていた。



―おわり―
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