この美しき世界で
1、始まりの戦い
『千年戦争』


その昔、およそ千年にも渡る戦いがあった。


幾多の戦士が倒れた。幾多の民が倒れた。森が死んだ。川が死んだ。


世界は荒廃した。


人間族、そして魔族。二つの一族の永きに渡る戦いは世界を破滅の寸前にまで追いやった。


戦いが千年を迎えたある日。聡明で争いを好まない十五人目の人間族の長、やがて賢王と呼ばれる王は提案した。


このままでは世界は滅ぶ。争いは終わりにしよう。


同様に世界の危機を感じとっていたのは八人目の魔族の長。


平和と自然を愛した深緑の魔王はそれを受け入れる。


こうして世界には平和が訪れた。


しかし千年の溝は簡単に埋まるものではない。


双方の一族は決して交わることはなく、大地をある境界線で二つに分けた。


『黒の森』


昼夜に関わらず永久に闇に染まった、光から見捨てられた森。


そこから北は魔族の地。南は人間族の地。


賢王と深緑の魔王は双方が互いに侵すことのない領域としてこの森を定めた。


そしてこれは『黒の森』の遥か北東。そこに在る、町から始まる物語。


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