この美しき世界で
ザウド歴498年。夏。


『千年戦争』から五百年余りが過ぎようとしていた。


人間族の地『ザウド』


この北東に、周りを砂漠と高い壁に囲まれた巨大な町がある。


戦士の町『バサク』


『千年戦争』の中幾多の戦火に晒されながらも唯一、一度も落ちることのなかった『バサク族』の町。


幾多の戦いの中、この町から幾多の名戦士、そして伝説が生まれた。


そして此処に、やがてその伝説に加わる一人の戦士がいた。


「ああ。今日もあっちぃな…。」


青年は呟いた。


まだ幼さの残る顔立ちに細いながらも鍛え抜かれた肉体に黒い鎧。腰には剣を携えている。


青年は『バサク族』独特の白銀の短い髪に滴る汗を拭う。


「やっぱりなー。この黒い鎧が日の光を…。」


ブツブツと文句をいいながら青年は土壁の町並みを歩く。


『千年戦争』終結後、世界は平和に溺れた。


戦いが無ければ剣は必要無し。徐々にではあるがそれが当たり前のようになっていった。


そんな中で『バサク族』は違った。再びあるかもしれない戦いに備え、毎日の訓練を続けていたのだ。


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