この美しき世界で
「ブゴォォォ!!」


二足歩行の獣が槍を手に暴れ回っている。毛に覆われた屈強な体躯に猪のような顔。『オーク』と呼ばれる魔族。


その目の前には男が一人。白銀の頭髪をなびかせ片手に構えるのは細身の長剣。身を包むのは、漆黒の鎧。


「ブゴォ!」


現れた外敵を駆逐せんとオークの両腕が唸る。槍というよりは棍棒を扱うように男めがけて叩き付ける。


男が刃を振るったのは同時のこと。細身の長剣が風を切り裂く。


突如動きを止めた猪の化物。男は振り向き剣を鞘に収める。


鍔鳴りは小さく音をたてて。目から光を失ったオークは大地に沈んでいった。





「じゃあこれが今回の報酬な。暴れオークの駆除。先方も喜んでたぜ。」


ギルドの窓口。係の男から小さな麻袋を受け取る。男は表情一つ変えることなく麻袋の中身を数えている。


「なぁあんた。そんだけの腕があんなら連合にでも志願したらどうだい?」

「あんたならそれなりの役職だって夢じゃな…」


係の男の言葉を遮るように男は荷物をまとめ、ギルドの扉から出ていく。


「あーあ。勿体無いね。良い戦士なんだけど。バサクのセロ、か…。」


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