この美しき世界で
「こんなあっちぃ中毎日毎日訓練…。嫌んなる。」


青年は切長の鋭い目を細めて遠くを見る。そこでは既に鎧に身を包んだ男達が剣を打ち合っていた。


青年同様に白銀の頭髪。


『バサク族』の戦士達である。


ただ青年と彼らの大きな違いは鎧の色にあった。


その色は白。光沢のある鎧が日の光を跳ね返している。


「まぁ、言ってらんないかね。」


青年が足を進めると白い鎧の戦士達は一様に手を止め、彼の方に向き直る。


「おはようございます!」

「おはようセロ!」

「おせーぞ隊長!また寝坊かぁ!?」


見れば若い戦士。青年、セロに口々に言葉を投げ掛ける。


セロが纏う黒い鎧はこの『バサク族』の戦士の頂点の証である。


元々はその昔、『千年戦争』の最中に単独でゴーレムの群れを壊滅させた伝説の戦士の持ち物。


「あー悪い悪い。」


やはり気だるげに手を振り返すセロはぐるりと辺りを見渡す。


「さて、じゃあまずは準備運動といくかね。」


そしてこのやる気の感じられない男。セロこそがその伝説の戦士の子孫。


そして『バサク族』戦士の頂点に立つ男なのだ。


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