元気あげます!巴里編
「そうさ、パリだけじゃないよ。
ヨーロッパじゅう彼女のことを知らない人はいないよ。

女性を代表する大実業家だ。
ファッション界や芸術、骨董、俺たちのやってるお菓子も彼女のバックアップなしでは人を育てるなんてことはできないんだから。

ただ、儲けるのではなくて、コトミがすごいのは人を育てることに関してすごいってことだよ。」


「へぇ。それで・・・なのかな。あはは・・はは・・・」



3日目以降は指導側はひかるに対して、口調は親切なのに、指導はきびしく、ひかるは何度も砂糖と卵をまぜることになってしまいました。


兄弟子のセルジュが険しい顔をして外に出てしまうこともありました。

チーフはひかるの腕がか細くて普通の職人の使う器具と材料の量だと腕を壊してしまうだろうと説明してくれました。


そしてチーフはひかるのために少し小さめなものを用意してまずは1つを確実に作るようにするように命じました。



そんな配慮にも、他の弟子はむっとした様子でしたが、だんだんひかるに対して、みんなが優しい眼差しでながめるようになっていきました。



それはひかるが職人志望ではないことや後ろ盾に琴美がいることなどが理由でしたが・・・一番みんなの心を動かしたのは、いつも楽しそうにお菓子を作ろうとしているひかるの姿勢でした。


いちばん指導にきつく当たっていたセルジュでさえ、ひかるのある言葉をきっかけに変化が見られました。



「若い女はすぐに泣いて帰るものではないのか?」


「私はすごい泣き虫ですよ。でも泣きごというのは禁止なんです。
泣きごとを一度でも言ったら、すぐに日本に連れて帰られて、陰口たたかれながら結婚しなきゃならないんです。

グチはどれだけ言っても手は動かせますからね。涙も流れたって手は動きます。
泣きごと言ったら、誰かに頼ってしまいたくなりますから。
泣きごとは言わないんです。」



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