元気あげます!巴里編
「ぷっ・・・ひかる、そんなことしなくても何もしやしないよ。
あははははは。」
ひかるは咄嗟に手でがっちり口をガードして、その勢いで両方の人差し指が目尻をひっぱってアカンベ~状態な顔になっていました。
「あ、ごめんね。つい・・・」
「ひかるは優しいね。逃げると私が気を悪くすると思った?」
「ううん。そこまで考える余裕もなかったわ。
ちょっとしたことで考え過ぎると、よくなることも悪くなっちゃうよ。
私が逃げちゃってたとしても、気を悪くする必要もないと思うけど。」
「そうだね。大嫌いだと宣言されたわけじゃないんだし。
母さんもそうだった。
捨てられたと思いこんでいたのは私の方で、母さんはずっと目をそらさずにいてくれたのがよくわかったよ。
ひかるにも嫌い宣言されていないし、がんばらないと・・・。」
「嫌いよ。ユウヤのやり方・・・。」
「えっ?」
「千裕様と正々堂々と争うならまだしも、何の関係もない三崎の社員の生活を脅かすようなことを平気でやるような人は嫌い。」
「申し訳ない。でも千裕と同じ家に住んでいるのは我慢できなかった・・・。
そういうのってさ、日本人は不潔とかいうんじゃないの?」
「あ・・・確かにそう見えるかも・・・。
いくらほとんど、顔合わせてる時間が短いっていっても周りからは同棲してるようにしか見えないだろうし。」
「すれ違いが多いから結婚しないの?」
「べつにそういうわけじゃ・・・。もともとは彼に少しでも近づきたいと思ったから。
住まいがじゃなくて、なんていうか・・・人間のレベル的にというか・・・。
シンデレラストーリーに甘えてばかりだと息詰まると思って。」
「いじらしいね。彼はいつまでそんなかわいいひかるを放っておくつもりなのかな?
私はそんなにながめてはいられないな。
すぐにでも抱きしめたくなるよ。きっと・・・」
「あっ・・・ごめん、ちょっと女の子の用事が・・・すぐもどります。」
ひかるはあわてて1階まで降りてホテルの入口近くまで行きました。