元気あげます!巴里編
ひかるは屋敷にもどると、千裕の寝室へと走って行きました。


バタン!


「千裕さまっ、ただいまぁーーー!」


「えっ!?あっ・・・うぐぁっ・・・おい。」


ひかるはベッドに寝ころんでいた千裕の真上から急降下しました。


「あ、痛かったですか?」


「セルジュといっしょじゃなかったのか?」


「セルジュさんが千裕様のことを教えてくれたんですよ。
何を考えているかとか・・・ね。
だから、もどってきたんです。

私がまだまだ子どもじみてるから、手も出してもらえないんですよね。
千裕様が管理人さんとキスしてたの見ただけで、ものすごくうろたえて、悲しくて交通事故にあいそうになって・・・。

大人として自信があったなら、その場で自己主張もできたんじゃないかって思ったりして、自分でどうして千裕様に聞かなかったのかって後悔して。

酔ってる男の人たちがいたときも、すごく怖くて、千裕様のところに居ようとしたら、おねえさんたちに囲まれてて、結局、龍ちゃんに遊んでもらって。

そんな子どもなのに、一人前の女性が望むようなことを偉そうに考えてて、私はやっぱり修行が足りないです。
わがままです。だから捨てないでください。」



「だれが捨てるなんて・・・」



「セルジュさんに私の生活費送るからって言ったんでしょ?」


「それは、もうひかるが俺のとこには帰って来ないと思ったからだよ。
嫌な思いさせて、すまなかった。
おまえがおばさんになるまでは、他人のいるところには行かないよ。」



「でも、千裕様は私を喜ばせようとして別荘に誘ってくれたんでしょう?」


「だが、結果はおまえを泣かせて、もう会えなくなるかもしれなかった。
管理人の岡村の夫が浮気して別れたらしいけど、あいつの中では夫はまだ忘れられない男で、さびしさを酒と俺とで埋めようとしてた。

彼女はかなり酔ってたし、俺も少し酔いがまわってたから、ボ~っとしている間にね・・・ひかるに見られてた。
ひかるが指輪を捨てて、走りだしてから酔いがいっぺんにさめたよ。」



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