元気あげます!巴里編
しかし、アリサという日系アメリカ人女性のイラストレーターが、庭でいっしょにお弁当を食べると言い出してから、ひとり、またひとりと、お弁当持ちの女性が増えていきました。
「はぁ・・・。みんな、僕のために無理しなくていいんですよ。
絵を描くのが仕事なんですから、お弁当作りで疲れないでください。」
千裕は申し訳なさそうに言いました。
「千裕さんは絵と同じように優しいのね。
その指輪がもしなかったら、みんなとっくに千裕さんに告白しちゃってるわよ。」
アリサは笑いながら言いました。
「困りますよ。僕のことはだいたい知らされているんでしょう?
琴美さんの孫だということも、記憶喪失だということも・・・。」
「え、ええ。でもそんな感じしないというか、あくまでも絵の印象からだけど、千裕さんは優しくて魅力的な人だと思う。
正直いって、その指輪持ってる人がうらやましいし、嫉妬しちゃう。」
「恐いな。でもこの指輪の人には絶対に何もしないで。
僕にとって本当に大切な人だから・・・。
絵を描いてみようって思ったのも、その人がすすめてくれたから。
はぁ・・・」
「周りでヒュ~ヒュ~ひやかされてるよ。あはは。
そんなに好きな人の話するわりには、表情が曇ったね。どうしたの?」
「こんなこと女性に聞くのは失礼だと思うんだけど、彼女は僕のことが好きだとよく言ってくれるんだけど・・・触れようとすると逃げられるっていうか。
婚約して同じ家にずっと暮らしているというのに、軽いキスしかさせてくれない。」
「女を抱きたいの?千裕さんだったら、ここで声かけたら手を上げる子多いよ。」
「冗談じゃない・・・。僕はそんな絶倫男じゃないって。
女性の体に飢えてるってわけじゃなくて・・・。」
「彼女がほしいんでしょ?なら、力づくで押し倒しちゃえばいいだけぢゃん。」
「やっぱりそれしかないか・・・。ごめん変なことをいって。」
「罪な彼女なのねぇ。私なら今からでも来て~なのに。ぷっ。あははは」