陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「政宗様」

静かに、冷たい声が聞こえてきた。恐る恐る声のした方を向くと、そこにはにっこりと笑った喜多の姿があった。

…そう、見た感じは笑っているように見える喜多の姿が。

「こんな夜更けに、女子の寝ている部屋に何用ですか?」

喜多の言葉に、政宗は一瞬ひるむも、キッと言い返した。

「こいつが急に逃げ出したから、どうかしたのかと聞きにきただけだ」

政宗の言葉に、喜多はふふっと笑いながら近づいてきた。

「聞きにきただけ、という割には、部屋の隅に追い詰めているように見えますが?」

喜多に言われて、政宗はため息を小さくつき、わかった、と言って幸姫のそばを離れた。

「まぁ、ここは小十郎の屋敷だしな」

ぽりぽりと頭をかきながら、襖を開けた。

「その代わり、明日の朝餉には幸姫も一緒に連れて来い。いいな?」

「…分かりました」

喜多が小さく頭を下げると、政宗はそのまま部屋を出て行った。

「こ…怖かったよー!」

ボロボロと涙をこぼす幸姫に、喜多は苦笑しながらよしよしと頭を撫でた。

「大丈夫。あんなですが、政宗様はとてもお優しい方ですから」

そっと、政宗が出て行ったほうをみつめながら、まぁ、と小さく溜息をつきながらボソッと呟いた。

「…少々手が早いというのがたまにきずなんですけれどもね」

「え?」

「いえ。何でもないのよ。ほら、もう夜も更けてまいりました。もう寝なさい」

まるで母親にあやされているような気がしつつも、幸姫は布団に潜り込み、目を閉じた。

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