飴色蝶 *Ⅰ*
店の外、護衛が傍で見守る中
携帯電話で、誰かと話している
庵を見つけた。

巴は、ずっと庵だけを
見つめている。

「すみれ、俺だ」

菫の部屋、下着のデザイン画が
書かれたスケッチブックが
テーブルの上に置かれていた。

「そろそろ、かかってくる頃
 だと思って、時計と睨めっこ
 してたのよ」

わざと、明るく振舞う菫の声。

「何かあったのか?すみれ」

「・・・イオリが心配すると
 いけないから言うつもりは
 無かったけど、正直に言うね
   
 今日、イオリと別れたすぐ後
 に彼に逢ったの」

「ホソヤ、あいつか
 どうして、お前の職場が・・
 すみれ、何かされなかったか
 大丈夫か?」

電話越しに私の事を心配する庵
を、とても愛しく思う。

「大丈夫だよ
 今日の彼は何もしなかったわ
 
 それに、同僚に呼ばれた私は
 すぐに、彼の元を離れる事が
 できたから、安心していいよ
 
 それより、イオリは大丈夫?
 変わった事は無い?」
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