前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
悪夢再び、またお姫様抱っこ。
男の俺が女の人にお姫様抱っことか、身長の低い先輩にお姫様抱っことか。
なにより、なんで俺を持てるんだろうか。
俺だって女の子の体重を抱える、だなんて至難の業なのに。
だけど目と鼻の先に先輩の顔があってドキッとした。
「早く治ってもらわないと、下手に手も出せないだろ? 何より辛い顔をしている空を見ていたくは無い」
な? 鈴理先輩の優しさ含む台詞に俺は赤面。
くそうっ、なんだよ、先輩カッコイイじゃんかよ。たじたじだ。
おかげで俺はちっとも男らしくない……カッコイイな、先輩。
俺が女なら普通に惚れていると思う。その女気ある姿。
やっぱモロッコで性転換してこようかなぁ。
女になった俺を先輩が好きでいてくれるか分からないけどさ。
さてさて、先輩はわざわざ俺をお姫様抱っこで布団まで運んだ後、
「腹が減っただろ?」
少し腹に入れておかなければな、と俺の顔を覗き込んできた。
それもそうだ。
薬飲まなきゃいけないし……先輩、三ツ星シェフに野菜スープ作ってきてくれるよう頼んでくれたんだよな。
ゼリーも一緒に付けてくれると言っていた筈。
「頂くっす」
俺は先輩に食べる意思を告げて上体を起こした。
うんと頷く鈴理先輩はパチンと指を鳴らす。
すると部屋の隅で待機していたグラサン男達が動き出した。
どうでもいいけど、あんた達、まだ部屋にいたんだ。てことはお姫様抱っこも見られ……ハズッ!
まさか襲われているところは見られていないよ、な?
そうこう思っている間にも、グラサン男達が居間に置いていたテーブルをこっちに持ってきて、周辺を片付け始めた。
あれ? ただ飯を食うだけなのに、なんで部屋を片付ける必要があるんだろう?
テーブルだって、わざわざこっちに持ってこなくても、俺がそっちに行くのに。
首を傾げる俺が絶句したのはその直後。
だって玄関から次々にメイドさんが入って来ては鍋をテーブルに置いていくんだけど、鍋が一つ、二つ、三つ……飛んで七つ? ありえねぇ。
野菜スープを作ってきてくれたにしては数が多くないか?
俺はテーブル横に置かれた小さな冷蔵庫に「……」だった。
中を見せてもらえば、色とりどりのゼリーがずらり。もはや何処からツッコめばいいか分からない。
まず言えることは、病人じゃなくてもこんな量は食えません……だよな。