前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「さてと準備は揃ったな。空、どれがいい? 和風からイタリアンまで野菜スープは取り揃えてある。好きなのを選べ」
「えら……えーっともしかして、お鍋の中身は全部違うんっすか?」
「野菜スープとはいえ、味にも好みがあるからな。空、どういう味付けが好みだ? ゼリーも27種類の味を揃えているからな。遠慮せずに言え」
俺は忘れていた。
鈴理先輩は生粋のお嬢さまだったってことを。
金の掛け方がここからして違う。マジで。
呆気に取られている俺は取り敢えず、スープの中身を拝見させてもらう。
うん、トマトスープが美味そうだからそれを選ばせて貰った。ゼリーは……も、先輩におススメを選んでもらった。
27種類もあるんだぜ? そりゃもう、迷うどころじゃないだろ。できることなら全部食してみたいよ。
てなわけで、トマトスープとざくろゼリーを頂くことに。
メイドさんに上等そうな器にスープを注いでもらい、それを俺は受け……取れず、先輩が受け取って匙を手にする。
想像は付くけど、先輩まさか……。
「病人の看護には欠かせないイベントだな。ほら、空、口を開けろ」
ほっらキッター! あーんイベント! ときめき場面発動!
お、落ち着け。
これは攻めも受けもないぞ。
普通に恋人さん同士ならあるイベントだ。
「あの、自分で」
取り敢えずお約束の言葉を言ってみるけど、
「あたしに食べられたいならいいぞ」
ニコッと脅されて、俺は喜んで食べさせてもらうことにした。
貞操を守るためなら何だってするだろ、フツー。
俺は先輩の差し出される匙をおずおず口に入れる。
嗚呼、なんだこの羞恥プレイ。
結構なまでにハズイぞ。
と、鈴理先輩が笑顔を輝かせてきた。
それはまさに攻め顔だった。
「あまり恥らいながら食べるな。あたしが我慢できなくなる。見境無く襲って欲しいなら、是非とも恥らってもらいたいが」
「………」
「まさか、空、最初からそれを狙って「極力恥らわぬよう努力するっす!」
アッブネー。
もう少しで先輩の攻めスイッチを押すところだったよ。
貞操の危機ってのはいつ訪れるか分かったもんじゃないよな。