前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
ちなみにこのお金は父さんが俺に託したもの。
母さんがデートのことを父さんに話したようで、餞別に受け取れと男前に差し出してくれた。
恐れ多くて受け取れずにいたのだけれど、「少しは甘えなさい」お前はいつも必要以上に遠慮するから。そう言ってお札を押し付けてきた。
その際、彼女に食事でも奢って良いところを見せればいい。
おつりは自分の小遣いにしていいから、父さんはそう言ってくれたっけ。
遠慮をすればするほど、うちの両親は寂しそうに笑うから、俺は最終的に笑顔で受け取った。
二人が俺を甘やかしたい気持ちは知っている。
口を揃えて楽しんできなさいと言ってくれた両親に土産でも買って帰ろう。
これでも俺はファザコンマザコン、両親が大好きだ。
大切にしたい人達だ。
「学院生活が落ち着いたら、バイト探さないとな。二人にお金をめぐんでもらうのも悪いし」
両親からは学業をおろそかにするだろうから、やめておけと止められている。
特に俺は特別補助制度を受けているから、そう簡単には成績を落とせない。無効になったら困る。
でも俺は家計のため、自分のために土日だけでもバイトをしたい。
「何かとお金がないと困るもんな……今もそう。デートにしちゃ空気を読めてないだろ。服を買う金くらい溜めないと」
すくりと立ち上がり、俺は自分の身形を見て溜息。
本日の豊福空の格好、上はカッターシャツとネクタイ、下は制服のズボン。つまりはまんま制服姿……しょーがないだろ、俺が持っている私服よりかは制服の方が立派だったんだから。
私服よりかはこっちの方が決まっている。
ブレザーだけでも脱いだ俺は偉いと思うんだけど。
初デートに制服かぁ。先輩、失望しちまわないかなぁ。
女の子って初デートはデート以上に気を配るって聞くしなぁ。
ガッカリしないかなぁ。
向こうはお金持ちのお嬢だし、きっと可愛い姿で来るんだろうな。
ワンピースとかさ。
ロングスカートとか……先輩はミニスカートより、ロングスカートの方が似合うよな、絶対。