前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


「先輩はヒーローっすね。こんな風に助けてくれるなんて」


相手が破顔した。


「それは極上の褒め言葉だ。あたしはあんたのヒーローになれているのだな」

「ええ。悔しいことに」


目じりを下げると、あたし様が再び頬に口づけをくれた。


今は素直に受け止めておこう。


気持ちが錯乱していると理由づけて、彼女の口づけを受け止めておこう。


鈴理先輩が俺に立てるかどうかを確認してきた。彼女の上にのっているとことを思い出し、俺は笑っている膝に叱咤して立ち上がる。

よろめくとあたし様が背中を支えてくれた。


うへい、本当に情けないな。俺。

膝が笑うほど、高所に恐怖していたんだろうな。


「保健室に行こう。そこならば、気持ちも落ち着けられるだろう」

「すみません」

「謝るくらいならば、さっさとあたしの命令を聞け。止まれと言ったのに」


手を引いてくれる彼女の仕方がなさそうな笑み。


女性らしい可愛い笑みに、俺は固唾を呑んで見惚れてしまった。





「た、隊長。我々の存在……ガン無視なんですけど」

「作戦は失敗、だな。失望させるどころか、親密度を上げてしまった!」


廃人と化している親衛隊や、


「空の奴。荷物忘れらぁ」

「仕方がないから後で届けてあげよう」


フライト兄弟の笑声がその場に満たしていたことに俺は気付けずにいた。

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