hiding
夢を、見ていた。

私は草原に寝転んで、さらさらと、誰かが私の髪を梳いている。

顔がよく見えない。でも、何でかな、凄く安心する。心地良い。

『薺菜…』

その人に名前を呼ばれた。

変なの。貴方はいつも私の事名前で呼ばないでしょ。ねぇ?

「…橘…君」



え?えぇぇ!?

私はガバッと飛び起きた。辺りには誰もいない。すっかり日が落ちて1番星が瞬き始めていた。

夢、かぁ。

1時間どころかたっぷり3時間も眠っていたようだ。アラームかけておけば良かったな。

それにしても何だろうあの恥ずかしい夢は。あのフワフワした雰囲気は何なの。

前髪にはまだあの手の感触が残っているような気がする。妙に現実的な夢だった。思い出すと顔から火が出そうだ。

堪えきれずに私は立ち上がった。スカートに付いた草を手で払って鞄を掴むと早足に歩き出した。

少し離れた所で私を見ている人には気付かなかった。
< 18 / 67 >

この作品をシェア

pagetop