hiding
「…そう。でも次あったら絶対私の家に来るのよ」
「菜々子、ありがとう」

それからどの位話をしていたのだろう。20日の隙間を埋めるように、私達は喋り続けた。日が落ちたのも気付かなかった。

久々の対話で舌が上手く回らなかったが、皆と喋るのはやっぱり楽しかった。

車の音で私達ははっとした。とっさに私は菜々子達を隠れさせた。

「……帰ってきた」

私の姿を確認すると母は車を止めて真っ直ぐ私の元に歩いてきた。

バシッ。

急に頬を打たれたせいで私は思いっきり舌を噛んでしまった。地味に痛い。

「元気なら学校に行きなさい」
「はい…」
「これ以上私の苦労を増やさないで」
「ごめんなさい」
「本当、何の為に生まれて来たのよ、あんた」

後ろで菜々子が息をのむ音が聞こえた。

「…私の名前を呼んでよ」

向き合うと、決めた。打たれても蹴られても、私は自分の気持ちをぶつけてみよう。

「………」
「ちゃんと私の目を見てよ」
「………」
「私を…受け入れてよ…」
「……風邪引くから早く家に入りなさい、…薺菜」

母は小声で、確かに私の名前を呼んだ。
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