禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
仕事柄構えた手帳は、まったくの白紙でした。振りだけでペンを動かしていましたが、彼女の言葉は一切合切、私の右耳から左耳へスルーしていきます。
子供を持ったことはないので1から100まで理解しているわけではありませんが……でも、やっぱりこんなの、子供を失った親の反応ではありません。
「ともきはですね、今度私に、テストで100点を取ってみせると張り切ってました。学校で先生に褒められた。嬉しかった。お母さんにも、僕のすごいとこ見せてあげるって」
たぶん彼女は――
「運動よりも勉強が得意な子でしたから。少しおとなしく育ってしまったかと心配していたんですが、そうやってやる気を見せて、一生懸命な姿を見せられると、親としては本当に。……だから早く帰ってきてほしいですわ。お母さん、ともきの100点を待ってるのよって」
狂ってしまっているんだと思います。
お子さんが行方不明になった心労から、きっと。
「そうですね。ともきくん、早く見つかるといいですよね」
玄関先、以外で。ちゃんと、血の通っている姿で。生きたまま。
祈るだけ、願うだけ、それがどれだけ空虚になるなことか……。気分の悪さが、彼女にぬか喜びをさせるほど、私の肌に湿気を帯びてまとわりついてきます。
気持ち悪い。
空気がというより……もはやいっそ、彼女が。彼女の放っている、雰囲気が。
ああ、本物の狂気を、人間は嫌悪するんですね。シャツの下で、私の肌が粟立っていました。
子供を持ったことはないので1から100まで理解しているわけではありませんが……でも、やっぱりこんなの、子供を失った親の反応ではありません。
「ともきはですね、今度私に、テストで100点を取ってみせると張り切ってました。学校で先生に褒められた。嬉しかった。お母さんにも、僕のすごいとこ見せてあげるって」
たぶん彼女は――
「運動よりも勉強が得意な子でしたから。少しおとなしく育ってしまったかと心配していたんですが、そうやってやる気を見せて、一生懸命な姿を見せられると、親としては本当に。……だから早く帰ってきてほしいですわ。お母さん、ともきの100点を待ってるのよって」
狂ってしまっているんだと思います。
お子さんが行方不明になった心労から、きっと。
「そうですね。ともきくん、早く見つかるといいですよね」
玄関先、以外で。ちゃんと、血の通っている姿で。生きたまま。
祈るだけ、願うだけ、それがどれだけ空虚になるなことか……。気分の悪さが、彼女にぬか喜びをさせるほど、私の肌に湿気を帯びてまとわりついてきます。
気持ち悪い。
空気がというより……もはやいっそ、彼女が。彼女の放っている、雰囲気が。
ああ、本物の狂気を、人間は嫌悪するんですね。シャツの下で、私の肌が粟立っていました。