禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
「お待たせしました。はい、どうぞ」

「あ……どうも」

白いクロスに包まれ、青いリボンで口を結ばれたクッキーを受け取る、そのときに。
音が、しました。

天井から、ごとりと。

正確には、二階の、部屋から。

二階……おそらくそこは、子供部屋。

「……いま……」

「なにか?」

「上から音が」

「そうですか?」

「……あの、失礼ですが二階にはどなたか?」

「まさか。上は子供部屋ですよ。ともきはまだ戻っておりませんし」

「です、よね……」

この人は、子供が無事に帰ってくることを、疑っていない。

狂気さえ滲むほどに、混ざるほどに。

ただただ、ともきくんが帰ってくることを。

「すみません。お邪魔しました」

その時、また音がしました。今度は上からではなく、玄関から。

玄関――今の私にとってそれは、死体の転がる場所にほかなりません。

脳裏に、無惨な姿となったともきくんが玄関先に放り捨てられた光景が、一瞬で浮かびました。

ですが、杞憂だったようです。

「あら、おかえりなさい」

「……ただいま」

土屋家の旦那さんが、帰ってきただけでしたから。
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