戦国に埋もれし儚き恋
その日の夜の月はとても美しく…満月だった。満月は人を惑わす、と聞いたことがあるがそう言い始めた人の気持ちが少し分かる気がする
夜に女中が私の寝支度をして部屋を出るのと同時に沙菜が入って来て……何故か上着を持ってきた。
『沙菜? もう庭には出るつもりはない』
「いえ…置いておきます。今日は私が夜に姫様が寝ているか確認する番なので」
言っていることがよく分からずに首を傾げていると真剣な目で
「沙菜は李由姫様の幸せしか願いません。何があっても…姫様の御側におり、味方でございます」
『沙菜?』
「姫様は御自分の心に素直になっても良いのです…咎める者がいたならば私が喜んで盾となりましょう」
あまりの強い言葉に反応出来ずに固まっていると
約束です、と優しく笑い部屋を出て行った。