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破壊
〜破壊〜



午前6時、ケンジは学校のグラウンドへ自転車で向かう。あまりに澄み切った冷たい空気を、ケンジはゆっくり丁寧に吸い込む。そうして自らの肺を浄化したり、心臓の鼓動や未だ眠り続ける身体の節々を一つずつ起こして行く。
タカギは1年だけで形成される新チームの発足に、全く異論がないと言った。もし、タカギが今回ことに反対した場合、ケンジはサッカー自体を辞めることを決意していた。それほど新チーム発足にとって、そしてケンジにとって「タカギ」は重要な「核」であった。


「ケンジ、とりあえず1年全員集めたよ」
タカギは行動が早い。ケンジは昼に召集をかけようと考えていたが、2.3年の目につかない早朝にしたほうが良いというタカギの気遣いであった。集合場所を体育館にしたのを見ても抜かりがない。

「ケンジ、お前昨日もめたらしいな」

そういうのはFWのキタモトだった。ケンジはキタモトのプレーが嫌いではない。むしろ好きなプレーヤーの1人である。敵ゴール前でのレスポンスの高さや、ゴールの嗅覚は抜群のものを持っている。そんなキタモトがレギュラーとして使われない理由、それは単に上から嫌われているというだけのことだ。

「向こうが勝手に騒いだだけだ。そんなことより、今から重要な話がある。何も言わず最後まで聞いてもらいたい」

ケンジの声に早朝の体育館は静けさを増した。

「俺とタカギは今日、退部届けを出そうと考えている。タカギはともかく、俺は今のチームにウンザリしている。正直、俺から見て今のレギュラーより上手くて強い奴がこの中にいると思う。だが、2.3年はそれを認めようとしない。そんなことで俺は3年間を無駄にしくないし、皆もそう思っているに違いない」

ケンジは一息つき、なおも話を続ける。

「俺は彼らに下手だからここ最近試合に勝てないといった。それは確固たる事実で、俺はその事実をストレートに伝えた。でも彼らはこの敗因がスランプか何かだと楽観的に過ごそうとしている。だが、俺を含め彼らはただヘタクソなだけなんだ。スランプはプロが陥るものだし、仮に俺たちアマチュアでもスランプがあったとしたら、それはかえって深刻なことだ。何故なら俺たちアマチュアにはスランプを抜け出すだけの技量と時間がない」

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