金魚恋

夜9時を廻った頃

-ピンポン-

お母さんかな?

うちは共働きで両親とも働いてる。
お父さんは単身赴任であちこち転勤してる。ここ何年かは会ってない。
寂しくないわけではないけど平気。
慣れてるし。

玄関に行き健サンを履いて
ガチャッとドアを開けると

『え?海斗!?』

そこには海斗が立っていた…。

「よっ!お前にお土産持って来たぞ♪」

そう自信満々な笑顔で言って透明のビニール袋に入った水の中をパタパタ泳ぎ回る金魚が一匹入った袋を差し出して来た。

『え?これ?え?なんで?どうして?』

「あはは。お前焦りすぎ(笑)今日花火大会だったろ?行ってきたんだよ!んで金魚すくいしたわけ」

訳がわからなくて受け取らない私にそう言うと

「コレがその戦利品」

私の手に無理矢理持たせて

「お前には感謝してんだよ…いつも元気もらってっから…」

片手を後頭部に回して恥ずかしそうに笑う

そんな海斗にキュンとときめく私

『ありがとう』

花火大会彼女と行ったのだって分かってる…

彼女のために捕ったのだって分かってる。

多分彼女にはちゃんと金魚をあげてるはず


< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop