蜜林檎 *Ⅰ*
樹の言葉は

杏の心に響いていた。
 
彼女も彼の手を取りたい

・・・そう思う程に。

しかし、杏を幼い頃から

支配する想い。
 
『恋に溺れるなんて
 
 どうかしている

 恋人なんていらない』

樹の手を取れば

きっと、彼に溺れてしまう。
 
周りが見えなくなる程に

彼だけを・・・

樹は、杏の言葉に動じる事無く

彼女を強く、強く
 
その胸に抱いたまま、呟く。

「俺はもう

 君を離さない・・・」

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