声恋 〜せいれん〜


「レイン! いやよ、レイン…!!」




雨に濡れたミチが、レインに向けた銃口をおろす。




「…っ、う…」




スクリーンが涙でゆらめく。どんどんぼやけてきて、よく見えなくなってきた。ちゃんと見たいのに…。




ヒロインの悲痛な声が、胸にささって痛かった。映画に入り込みつつ、この声優さんのうまさにも感心する。はぁ〜。蓮也さんとも、息ぴったりだ。この方、最近よく目にするな。女性なんだけど、かっこ良くて、なんか惚れそう! 風…なんとかさんっていったっけ? あんな声優さんに、なりたいな〜。




上映が終わって、まわりが明るくなった。空気が、涙で濡れている。パラパラと立ち上がるひとたちや、まだすわり込んで、泣いているひとたちがいた。わたしも動けなかった。涙が止まらなくて…。




バッグからハンカチをとりだしたとき、小さく嗚咽している声が聞こえた。




わたしは、ハンカチを凛ちゃんにさしだした。気づいた凛ちゃんは、一瞬わたしを見て、ちょっと悩んでからハンカチを受けとってくれた。




「はぁ…まだ胸が痛い…」




「そこまで泣かれるのは、俺としたらうれしいけどな」




笑って、わたしの頭をぽんぽんする蓮也さん。えへへ。




「…あの、さ」




ぽそっとした声と同時に、ちょんちょんって背中をつつかれた。ふりかえると、凛ちゃんがいた。




「ん? なに? どしたの、凛ちゃん」




「…これ…ハンカチ、ありがと…」




「…! あはっ、ううん! 感動したね、映画!」




「ア…アンタは泣きすぎだけど」




「そうかな? ふふ。でも…蓮也さん、かっこよかったね!」




こそっと凛ちゃんに耳うちする。




「あたりまえ! 凛のお兄様なんだから」




「ふふっ、そうだね。わたしの彼氏だしね!」




「ちがーう! 凛は認めないんだからっ」




「あははっ」





< 101 / 286 >

この作品をシェア

pagetop