声恋 〜せいれん〜
「レイン! いやよ、レイン…!!」
雨に濡れたミチが、レインに向けた銃口をおろす。
「…っ、う…」
スクリーンが涙でゆらめく。どんどんぼやけてきて、よく見えなくなってきた。ちゃんと見たいのに…。
ヒロインの悲痛な声が、胸にささって痛かった。映画に入り込みつつ、この声優さんのうまさにも感心する。はぁ〜。蓮也さんとも、息ぴったりだ。この方、最近よく目にするな。女性なんだけど、かっこ良くて、なんか惚れそう! 風…なんとかさんっていったっけ? あんな声優さんに、なりたいな〜。
上映が終わって、まわりが明るくなった。空気が、涙で濡れている。パラパラと立ち上がるひとたちや、まだすわり込んで、泣いているひとたちがいた。わたしも動けなかった。涙が止まらなくて…。
バッグからハンカチをとりだしたとき、小さく嗚咽している声が聞こえた。
わたしは、ハンカチを凛ちゃんにさしだした。気づいた凛ちゃんは、一瞬わたしを見て、ちょっと悩んでからハンカチを受けとってくれた。
「はぁ…まだ胸が痛い…」
「そこまで泣かれるのは、俺としたらうれしいけどな」
笑って、わたしの頭をぽんぽんする蓮也さん。えへへ。
「…あの、さ」
ぽそっとした声と同時に、ちょんちょんって背中をつつかれた。ふりかえると、凛ちゃんがいた。
「ん? なに? どしたの、凛ちゃん」
「…これ…ハンカチ、ありがと…」
「…! あはっ、ううん! 感動したね、映画!」
「ア…アンタは泣きすぎだけど」
「そうかな? ふふ。でも…蓮也さん、かっこよかったね!」
こそっと凛ちゃんに耳うちする。
「あたりまえ! 凛のお兄様なんだから」
「ふふっ、そうだね。わたしの彼氏だしね!」
「ちがーう! 凛は認めないんだからっ」
「あははっ」