声恋 〜せいれん〜




海底に降り立つわたしたちの上に、アトランティスの青空が広がる。




そこは、神秘の生き物たちのパラダイス。




「わあ…」




わたしの上を、マンタがゆっくりと泳いでいく。羽根をひろげて、飛んでいるみたい。




「かわいいー、なんか優雅ー」




「下から見てるとさ、空飛んでるみたいだな」




「あは、蓮也さんもそう思いますか? 飛べたら気持ちよさそうですよね」




はあ~、蓮也さんがおんなじこと考えてたなんて…なんかすごいうれしい!




青い青い世界。あなたとわたし、ふたりきり…




「なにお兄様ばっかり見てるの。魚を見にきたんでしょ」




ぐい、と服のすそを凛ちゃんにひっぱられた。




う…そうなんだけどさ…ちょっとくらいあまーい雰囲気になりたかったんだもん。




「こっち、こっちきて」




すそをひっぱられたまま凛ちゃんについていくと、桜の花びらが水中をまわっていた。




「わ…かわいい! ピンクの魚だあ! 模様が桜の花びらみたい~! すごいかわいい! 凛ちゃん、よく見つけたね~」




「べつに…偶然だし。…アンタが見つけたらよろこぶかなって思ったけど…」




ぽそってつぶやいて、あっち向いちゃった凛ちゃん。聞こえちゃった。聞こえちゃったよ、凛ちゃん。




「凛ちゃ~んっ、ありがとうー!!」




かばって凛ちゃんに抱きついて、ぎゅうってした。




「ちょっ…くっつくな! 放せよ、陽菜っ!」




…! “陽菜”って呼んだ…凛ちゃんがわたしのこと名前で呼んだー!!




「やーだ、放さない~。凛ちゃん大好きー♪」




「わあ! 放せバカ、陽菜ぁ!」




「あ、サメだ」




「いやだぁ、こわいっ!」




ギュッ




ふふっ、まだまだ子供ですねぇ。よしよし。




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