声恋 〜せいれん〜




「で…一年間練習してさ、また会えたんだよ、その人と」




「じゃ、じゃあ、そこでバシッと決めたわけですね、蓮也少年は?!」




「いや…驚いたことに、その人はオレのことおぼえてくれててさ、それがすっごくうれしかったんだけど、そうなると急に、なんか…その人のためにそんなに必死になってるってのが恥ずかしくなったんだよ。思春期の男にはよくあることで、女を意識してる自分がすげぇかっこわるく思えちゃってさ。
…それで、わざとはずしたんだ。で、お前のことなんか何とも思ってないぜってフリして去るつもりだったんだ。そしたらその人が、また残念だったねって、あめ玉をくれてさ」




「きゃぁ、いい話!」




「ふっ。そしたらオレ、もう、恥ずかしさでいっぱいになって、いらないって叫んでそっから走って逃げ出したんだよね」




「え~、うそ~、なにそれ~」




「で、それっきり。初恋なんてそんなもんさ」




「へぇ〜。あ! わたしの初恋は蓮也さんが声をあてた『パティシエ戦隊』のカシスブラックですよ!」




「お前…人の封印した思い出をよくおぼえてるな…」




「だって、大好きだったもん!」




それを聞いて、ハハハって蓮也さんが笑った。うーっ! その無邪気な笑顔…ますます好きになっちゃうよ!!



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