声恋 〜せいれん〜




ピタ…




「きゃあああっ! なにかさわったあっ!!」




「ひっ、陽菜! 大きい声ださないでよっ!」




「だ、だって…」




「“だって”じゃないっ。そんな子供だましをこわがるなんて、陽菜はやっぱりこども!」




むう~…って、凛ちゃん、その手はなにかな? しっかりわたしの浴衣のはしをつかんでるじゃん。




あぁ…お祭りのおばけ屋敷だからこわくないと思ったのに。かわいいおばけが出てくると思ってたのに!




意外と本格的っていうか、外の木々のざわめきが聞こえてきて…よけいに怖いんだけど!!




「って、蓮也さん…? 蓮也さんどこ!?」




「え!? お兄様、お兄様どこーっ!?」




「クッ…」




凛ちゃんと二人でわあわあしてたら、うしろから蓮也さんの笑い声が聞こえた。




う、笑われた…でもでもっ、笑ってる場合じゃないですよお!




「ほら、ここだよ」




そういって、蓮也さんがわたしの手をにぎってくれた。




やだ! 蓮也さんと手つないじゃった! どうしようっ!!




冷たい空気が一瞬にしてふっ飛んじゃった。蓮也さんの手の、あたたかさのおかげで。




「えへ…蓮也さんがいるなら、こわくないです」




ぎゅっ…て強くにぎり返した。もう、はぐれないように…。




「こら、陽菜! なにお兄様にくっついて…って、わあっ!」




「り、凛ちゃん大丈夫!?」




ばっ、と凛ちゃんに向かって手をさしだす。わたしがさしだした手を、泣き出しそうな目でじっと見る凛ちゃん。




「ひ…陽菜がこわがってるから、手つないであげる」




ちょっと震える声で言いながら、凛ちゃんは両手でわたしの手をにぎった。




「よし! めざせゴール!! いこっ!」



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