声恋 〜せいれん〜




「ま、少しだけな」




そういって蓮也さんはやさしく歌いだした。力強い声。それでいて甘く、深く…わたしの中に、入ってとけていく。




今この瞬間、わたしのためだけに生まれた、蓮也の歌声。




ながい地球の歴史において、今この一瞬にしか存在しない、特別なじかん。




蓮也が歌ったあともしばらくは、わたしのなかに歌が残っていた。




…もうすこしだけ、待って。




…あなたがわたしに、染み込むのを…。



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