声恋 〜せいれん〜




「さ、どーんと食べてくれたまえ! なんならここにあるケーキ、ぜーんぶ食べていいからね! 今日はわたしのおごりだから!」




「食べてくれたまえって…バイキングだしね」




「おお! そうであったか! いいじゃん、いっぱい食べられるよー! きゃー、目移りしちゃう! ぜ、ぜんぶ、全部食べたいよぉ。はぁはぁ」




ちりばめられた宝石たちを、一個一個、吟味して、選んでいく。




「女の子ってさ、ちょっとずついろんなの食べるの好きだよね」




「そうでーす。お弁当とかお菓子とか、いろんなの分けあって食べるのが好きなんです!」




「男はそういうの、ないなぁ。自分の食べたいものをいっぱい食べたいじゃん」




「ふうーん。だって女の子は欲ばりだからね! あ! クリスマスプレゼント、べつに気をつかわなくていいからね!」




「…」




勢いで言ってしまったけど…そうなのだ。クリスマス、三ヶ月後のクリスマス、蓮也さんとは過ごせない…彼はPVの撮影で海外にいくのだ。




…さびしい。いっしょに過ごせると思ってたのに…あ、ダメダメ! 今日は優一くんの誕生日。元気な顔しなきゃ!




「あ、これ、おいしい」




「あ、わたしも食べたい! ちょうだい!」




「バイキングなんだし、自分で新しいのとってくればいいじゃん…」




「それ! 優一くんのそれが食べたいんだよぉ~、しかも今すぐぅ~」




「…はい」




「そんな、お皿ごとわたされても…一口でいいよぉ~」




「欲ばりというか…ただのわがままだよね…はい」




「はむぁっ…ん…あ~、おいしい! 来てよかった~」




「…ぼくのために、来たんだよね?」




そしてそのあと、優一くんが放った一言が、わたしの動きを止めた。




「蓮也と、つきあってるんでしょ」



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