声恋 〜せいれん〜
「え?! なんでそれを?! あ、もぉ~、エリカでしょ! また~、すぐなんでもしゃべるんだから~」
恥ずかしさを装うと声のトーンが一つ上がってしまう。
「…なんか、心配してたみたいだけど。べつに、心配するようなこと、ないんでしょ? ちゃんと大切にされてるんでしょ、蓮也に」
「…うん、そう、そうそう! 蓮也さん、とってもやさしいよぉ~っ!」
妹の凛ちゃんにもやさしいけど…忙しくてあんまり会えないし…クリスマスも、会えないけど…。
いやいや、そんなふうに考えちゃダメ! 蓮也さんは、わたしのこと、とても大事に思ってくれている…。
海辺でのキスをまた思い出す。
あのときの太陽の輝きと、蓮也さんの腕のぬくもりと。
「ひな」ってわたしを呼ぶ声と、くちびると。
「なら、いいんだ。桜木さんが、幸せなら」
そういって優一くんは目を伏せると、ストローでアイスティーを飲んだ。