声恋 〜せいれん〜
いっしょに誕生日をお祝いしたあと、わたしと優一くんのつきあいは、また深みを増した感じがした。
あいかわらず音声のやり取りをして、朝に優一くんが再度聴き直しながら、わたしにアドバイスをしてくれる。
登下校時、わたしの買ったマフラーを身につけてくれてる。
そういえば、もう秋もだいぶ深まってきた。
もうすぐ、クリスマスだもんね。
一年が終わる。
ほんとうにこの一年は早かったなぁ。
優一くんとの何気ない会話から、私の夢『声優になる』に、出会えた。
それをかなえるための、新しい人生、新しい日々が始まった。
そして町で偶然に出会えた…ううん、きっとわたしの夢を、神様が応援してくれたんだと思う、憧れの声優だった蓮也さんに、出会えた。
妹の凛ちゃんとも仲よくなれたし、いっしょにデートしたり…キスしたり…。
もう…「彼女」なんだよね。「彼女」って思っても…いいですか?
そしたらもっとこの先…もっとあなたと、つながれますか? もっと深い関係に、なれますか?
…あいたいな。声が聞きたい…蓮也さんの、顔がみたいよ。
どんどん、どんどん、欲ばりになる。でも、それが恋する人のすなおな気持ちだから。自分だけではおさえきれないほどの、気持ちがあるか ら。
たとえ蓮也さんが忙しくて、会えなくても。
たとえ大勢いるファンの中の、一人でも。
わたしにとってあなたが特別な人のように、あなたの中にも、わたしは特別な子ですか?
秋の枯葉が、ひらひらと落ちてくる。
わたしはそっと、それに手を伸ばす。