声恋 〜せいれん〜
「あ?! え?! いや…」
まさか“蓮也さんの彼女だから出させてもらえましたぁ”なんて言えないよね…。
「あ! えっと、その、その声優…声優つながりです! その学校に入るんです、わたし、それで、その、人手が足りないからって、借り出されたんです!」
あちゃー、なに言ってんだろ、わたし。こんな嘘、すぐばれちゃうよ。
「へぇー。もうあんた進路決めたんだ、そうかそうか、科は違うけど、わたしの後輩になるわけか~、なんだ、せっかくあんたと縁切れたと思ったのに、またやっかいな荷物が増えたぞぉ〜」
「もぉ~、またすぐそう言う…」
「へへ~、跳べないです、わたしにはムリです、ってさんざんくやし涙ながしてたのは、どこのどいつだっけ~?」
「ああ~、まだそんなことおぼえて…もうわすれてくださいよぉ~」
「はっは~、泣け泣けこのやろぉ~」
ふぅわ~、なんとかごまかせたけど…なんか、こういう嘘つくのいやだな~。それに先輩はきちんとオーデション受けて、実力でこの場にいるのに、わたしはコネでここにいるようなもんだし…。
…ううん、そういうヒクツな考えはよそう!
がんばって、蓮也さんの役に立とう! 他の子たちにも、蓮也さんにも、ほめてもらえるように、一生懸命がんばろう!
って、そういえば、蓮也さんいないな…いても会えないか…だって、恋人同士ってこと、バレたらヤバいもんね…お仕事のジャマしちゃいけないし…。
あ、ダメダメ、またヒクツモード入る所だった!わたしのやるべきことをがんばるんだ! わたし!
「…あ、じゃあ、またあとで…会えるかな? わたし、センターでほとんど校内にいるから会う機会ほとんどないとおもうけど…メアド変わってないよね?
とにかくメールする!」
そう言ってバイバイと手をふり、また風のように去っていくアユ先輩…ああ、かっこいいなぁ。手足も長いし、美人だし。きっとダンスもすごくウマいんだろうなぁ…。
よーし、負けるか! 先輩と話せて、ちょっと緊張もほぐれたし! オッシャー! やるぞーっ!