声恋 〜せいれん〜
「ホットコーヒー」
ウェイトレスにそう伝えると、黒猫のケースに入ったタバコを取り出そうとした。
「あ、ゴメン」
そう言ってまたしまう。
「で? 話って?」
単刀直入に切り出す。
「蓮也さんと、なんでまたよりを戻そうと思ったんですか。」
わたしもまっすぐにきく。負けられない。
「…全部聞いたんだ。わたしたちのこと話すなんて、蓮也よっぽどあなたのことが気に入ってるのね」
むっ。また“正式な恋人”目線…。
「ええ、きちんとおつきあいして、彼氏彼女の関係ですから。あとからきて、間に入られて黙っているわけにはいきません」
「…わたしね、当時蓮也といっしょにいても、ずっとさびしかったの」
塔子さんはかまわずに話を続ける。
「いっしょに声優を目指して…まあもともと蓮也は音楽をずっとやってたんだけど…彼の方ばっかり順調で、わたし自分に自信がなくなってったの。どんどん、どんどん。ああ、彼はあんなにも才能にあふれているのに、わたしときたら全然お仕事ももらえない、それよりも自分の納得できるお芝居ができていない、って。それはもう、毎日ネガティブだった…。
「いたたまれなくなったのよね、彼といることに。彼はなんにも言わなかったけど…それがよけいにつらかった。だから、わたしから言い出した。もう、別れましょうって。あなたにはもっとふさわしい人がいるって」