声恋 〜せいれん〜
「桜木さんってさ…ぼくに声優の先生として、男の友達として、たよりにしてくれたけど…“男性”としては、たよらなかった、見てくれなかったよね。桜木さんには蓮也がいたからそう見えなかったのは当たり前なんだけど…でも、それってけっこう男としてはこたえるんだよね…自分が男性として魅力がないんじゃないか、信頼されてないんじゃないかって…」
「え…そんなこと…」
思ってたんだ…?
その言葉に…わたしはなんてこたえていいのかわからなかった。優一くんの目から逃れるようにうつむいた。優一くん…わたしはけっこうたよってたんだよ? 優一くんに…。
「これからも、友達だよね」
「え?! うん! 当たり前じゃない! ずっと友達だよ!」
元気づけようとしたその言葉で、優一くんは悲しそうな笑顔でこたえた。
「そうだよね…これからも、友達」
「うん! 友達!」
そう言って、わたしたちは別れた。
お互い“友達だ”と言いあいながら。
それ以来、優一くんとの連絡は途絶えた。