声恋 〜せいれん〜
準備ができて、会場の明かりが落とされる。
投影された星空が場内の天井に浮かび上がる。
やさしくゆっくりとしたメロディーがわたしをあの日の夜に連れもどす。
蓮也さんと、はじめてひとつになった夜。
たき火のマシュマロも、いっしょに入った毛布も、ベッドで見上げた星空も、ぜんぶわたしの大切な思い出。
彼の歌声を聴いていると、彼も同じ想いだったのがよくわかった。
マイクをにぎる手に、わたしがプレゼントしたリストバンドを見つけた。
(蓮也さん…まだ、持っててくれたんだ…)
歌詞は、それまで好き同士だった二人が遠くにはなれてしまい、別れてしまうものだった。
でも、見ている星空は同じ。心はつながっている、とつづく。
そう…。
わたしは、蓮也さんの恋人にはなれなかった。
彼にとって、忘れられない人がいたから。
もし、わたしと彼が出会うのがもう少し早かったら…。
もし、わたしが塔子さん以上の愛を蓮也さんに注げていたら…。
そんな空想も、ふたりで見上げたあの星空の確かさに比べたら、はかなく散っていく。
それでも…。
それでも…。
わたしは蓮也さんが好きだ。
神月蓮也の、ファンだ。
いままでも。
これからも。
それだけは、自信を持っていえる。
気づかないうちに流れた涙をぬぐう…もう泣かないよ、だいじょうぶ。
ありがとう…蓮也さん…。