声恋 〜せいれん〜




『あいたくて』 工藤直子




あいたくて




だれかにあいたくて






それはそういった冒頭から始まるごく短い詩だった。






おつかいの とちゅうで




迷ってしまった子どもみたい




とほうに くれている






これが、桜木さんの心境だったのだろう。ずっと、そういう気持ちですごしていたんだろうってのが、よくわかる。






それでも 手のなかに




みえないことづけを




にぎりしめているような気がするから




それを手わたさなくちゃ






桜木さんの心がそのまま手渡されているかのような。彼女がすぐそばにいるかのような。そんな、彼女の声。






だから




あいたくて






…詩の朗読が終わり、また桜木さんの話し声に戻る。



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