声恋 〜せいれん〜
川沿いの道は街灯がところどころしかなかく、闇と光が交互に入れかわっていた。
闇の合間をぬって、白い桜の木々がぼうっと浮かび上がる。
ぼくと塔子さんだけが、現世とあの世のはざまに取り残されてしまったような気分になる。
「…あの葬式に来てたすずって子と、今度のアニメでいっしょにやることになったよ」
「…へえ、彼女最近かなり目立ってきてますね。アイドル業界だけじゃなく、声優業界もいまイチオシでしょ」
「…あんな子どもには、まだまだ負けないけどね」
そんな塔子さんらしい発言に、おもわず笑ってしまう。
「…ふふっ…そういえば、『みちのけものたち』も彼女の代わりを見つけて、すぐまたはじめてましたね。さすがは国民的番組、簡単にはへこたれませんね」
「…背負ってるものが、大きいからね。立ち止まってるわけにはいかないのよ。仲西さんも言ってた…“おばあちゃんたちには、時間がないの…わたしたちには、せいいっぱいやれる時間が、少ないから”って…なんか、わかるなぁ。わたしも、年を取るごとにやりたいことが増えてきちゃって、時間がない、時間がないって叫んでるもん」
「ははっ、その気持ち、わかります。若いころの方が、なんか時間もてあましてましたよね」
「…時間かぁ…でも、一番生きるのに一生懸命だったのは、彼女だったよね…」
塔子さんらしくない、弱気な発言。
そんなさみしさにおそわれたとき、ぼくはいろいろな解決方法を身につけた。この一年で。
「…なにやってるの? 優一くん」