声恋 〜せいれん〜
沈黙…
沈黙…
優一くんの瞳が…すごく考えてる。
長い時間をかけて、ようやく言葉が出てきた。
「声優になりたい、って…桜木さん、本気?」
「うん、本気」
「そう…なんで?」
「え?!」
「なんで声優になりたいのかなって。好きだって言ってた声優…神月蓮也の影響?」
「うん…そうだね、それもある。でもそれだけじゃないよ。
わたし、キャラになりきってるとき、すごく楽しいの! まだ演じるってとこまでいってないのはわかってるけど…でもね、いろんな人の気持ちとか感じてる想いを考えて、自分の声で表現できるのが、ほんとにほんとに楽しいんだ! もっといろいろな人になってみたい。わたしの想いをこめた声を、たくさんの人に聞いてほしい!」
優一くんは、わたしの言葉をだまって最後まで聞いてくれた。じっと、わたしの目を見て…。
「だから…」
「うん…。まだ『演技』まではいってないよね」
「うん。全然だよ。ただ、素人のぼくから見ても桜木さんは相手の…キャラの気持ちに入りこめていると思うよ。楽しそうなのも、悲しいのも、気持ちがまっすぐ伝わってくるし」
「ほんと?」
「うん、だからもっと勉強して経験をつめば、もっとずっとよくなると思うよ」
「…! あのっ、優一くんにお願いがあるの!!」
ガバッ、とわたしは優一くんに前かがみで近づいた。