彼と私と隣の彼

そこからどうやって歩いたのか自分でもわからない。


でも気づいたらあたしは教室の前に立っていて、中へ入れば当然春人の姿はない。



春人は?なんて聞く千春にも適当な言い訳をして、何もなかったかのようにあたしは作業に戻る。



そう、何もなかった。


何も…




春人とあたし。


そうだね、最初から本当は何でもなかったんだ…




「あー!お前、どこ行ってたんだよ!」



急に騒がしくなる教室。


入り口に背を向けたままのあたしだけど、誰?なんてそんなの当然わかってしまう。



「ごめんごめん。」


いつもの調子の良い声で、



「ちょっと昼寝しすぎた♪」



嘘をつく。




いつもそうだったの?



そうだったの?



そうやって嘘…ついてたの?




「お前、自分で中谷の手伝いするとか言ってたじゃん!」



アホっ



なんてクラスに突っ込まれる春人。


ああ…もうバカ。



どうしてそこであたしの名前出しちゃうの?



そんなことしたら…



「詩乃ちゃん。」



ほら、やっぱり。



春人が近づいてくるのがわかる。




やだ。



来ないで。




まだ気持ちが追いつかない。

整理ができていない。



そんな時に、近づかないで。




「ごめんね、詩乃ちゃん。」



すぐ近くで聞こえる春人の声にあたしは未だに振り向けない。




やめて。



今は会いたくなかった。



どうしてだろう…


さっきの場面が何度も何度も何度も、頭をよぎる。



どうしても離れない。



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