彼と私と隣の彼
窓を開けて身を乗り出したあたしは、そのまま声を上げることなく止まったまま。
体が?
いや、むしろ思考までもが。
何なの?これ…
何というか、どうして?
春人が何してたかなんて、わかる…
春人の後ろ姿しかわかんないけど…そんなの…
春人…
女の子と遊ぶの、もうやめたって…
メモリも全部消してたよね?
それとも、キスは遊びのうちにはいらない?
もはや挨拶と一緒なの?
ああ…春人ならありえそう…
ってそうじゃない。
もしかして、あたしにくれた言葉自体全部嘘だった?
全部…嘘?
俺にしなよっていつもしつこいくらいの春人も
俺、優しいよって、笑う春人も
大事にするよって真剣な春人も
全部全部…嘘だった?
気まぐれだった?
あたしも遊ばれていたのかな?
「春人…。」
今にも消えそうなあたしの小さな小さな声。
3階の窓からあそこまでどう考えたって届かない。
ただ、吹き付ける風に乗せて消えていくだけのあたしの声。
届くことのないあたしの声。
いっそ、今見た出来事もこの風と一緒に流してしまいたかった…