彼と私と隣の彼
「詩乃ちゃんが好きだからだよ。」
「あたし…」
「詩乃ちゃんが先輩を好きだっていうことと、変わらない。何がとかどうしてとか、そういうんじゃない。」
詩乃ちゃんだから好きなんだ。
あまりにも真剣な春人の瞳に今にも吸い込まれそう。
いつものふざけた春人はどこにもいない。
まるで別人のような春人に、あたしも瞳を反らしちゃいけない。
春人の言葉にあたしも真剣に返さなきゃいけない。
そう思ったあたしは、口を開こうとした。
が、
「本当はさ、席が隣なのに俺のこと好きにならないところが気に入ったんだ。」
「…へ?」
まだ続いていた春人の言葉に少々驚く。
「先輩にしかまるで目がない詩乃ちゃんを、俺のこと好きにさせたら面白いんだろうなって思ったんだ。」
そばにあるテーブルにゆっくりと腰かけた春人は、また視線を下にずらす。
「だけど、そんな詩乃ちゃんに惹かれたのは俺。俺が先に好きになったみたい。」
だせー…
ははっと軽く笑う春人にあたしは何も言えず、
「でも、だからこそ、絶対手に入れようと思った。誰にも渡さない。先輩にだって負けない。」
「でもあたし、何度も…」
「それでも俺のもんになると思ったよ。自信あったもん。」
その自信はいったいどこから?
生まれつきのもの?
それとも今までの経験?
「だって詩乃ちゃん、俺に少しでも…少しでも傾いてたでしょ?」
「え…?」
「気づかないフリしてるの?」
「何…言って…。」
傾いた?
あたしが春人に?