彼と私と隣の彼
「…本当はわかってるくせに。」
あたしの気持ちも全部、本当は見透かしてるんだ。
だって今こうして、抱きしめられてるあたしが抵抗しないのもまた一つ、理由になってる。
「詩乃ちゃんの口から聞きたいんだよ。」
表情は見えないけれど、声だけでわかる。
春人の優しい雰囲気。
いつからかな…
先輩が好きだったはずなのに…
いつから…
気づかなかったこの気持ち。
ううん、向き合わなかったんだ。
本当はわかっていたけど…気持ちを気持ちで隠して、先輩と言い続けることで本当の自分を隠していた。
それが今、この瞬間にあふれ出す。
「好きだよ…。」
本当はずっとずっと…
好きだったと思うんだ。
「いつまでも気づかないフリをしていてごめんね。」
春人の気持ちにも自分の気持ちにも向き合わず、目を反らして。
何も成長することのない気持ちにしようと、気づかないうちに必死だったのかもしれない。
それが今、成長してしまった気持ちが今、
あふれ出したんだ。
「…はは、やべー…」
一瞬抱きしめられた腕が緩む。
「俺、ダメだ。やべーわ、想像以上。」
「…え?」
「好きな子に好きって言われるの…こんなやべーんだ。」
さっきからやべーやべーと言う春人。
緩んだ腕を良いことに、ソッと顔を覗き込めば、それはそれは赤くて…
「春人…。」
右手で頬に触れれば、熱が伝わる。