彼と私と隣の彼
「わかってたくせに…」
あたしの気持ち、わかってたくせに赤くなりすぎだよ。
「だから想像以上だって言ったじゃん。」
詩乃ちゃんが悪いっての。
と今度は右手で口元を隠しながら
「しばらく見ないで。」
と顔を背けた春人だけど、そんなのあたしが許さない。
「いや、見る。」
背けた春人の顔を覗き込めば、視線だけをあたしに向ける。
少しだけ泳ぐ視線にあたしは、可愛いな、なんて思ったりもして。
「…そんなに見たらチューしちゃうよ?」
春人の言葉に一瞬あたしの体も火照る。
きっとこれであたしが引くとでも思ったんだろう。
けどそんなわけないじゃない。
「良いよ。」
あたしを甘く見たバツ。
予想とは反したであろうあたしの言葉に目を丸くしたのは春人。
「いや、違くて。今のは冗談。」
「…なんでよ。」
「や、俺だってしたいよ。したいけど…ほら。」
さっきからぐだぐだとなんだかいつもの春人らしくない。
「何?ハッキリ言いなって。」
主導権はあたし。
「だから…ほら女の子と…したから。今日はちょっと…」
目を泳がせながら、ね?と同意を求めたのか、
それならしょうがないとあたしが言うと思ったのか。
そんなこと、そんなの…
さっきの女の子とのキスなんてあたしが消してあげる。