凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━





―――現在。


ここに幽閉されてからかなりの時間が経った。いつの間にやら日は落ちていて、夜を迎えようとしている。

当たり前に電気なんて通っているわけがなく、加えて燭台すらない部屋。



「っ……ひ、く…も、やだよ…」



その薄暗い空間で私はずっと膝を抱え、慣れない着物に包まれた体を震わせ、小さな嗚咽を漏らしていた。

希望をちらつかせては、踏み躙(ニジ)られ。何度も身の危険に晒され…。まるで自分の命を弄ばれているかのようで。


沖田さんと東雲さんは味方なのか、と。錯覚しそうになる場面もあったけど、やはり彼らは新撰組。正体不明な私は、所詮敵でしかないんだ。そして…最後の近藤さんのあの反応。私、もう助からないのかな、このまま本当に殺されてしまうんじゃ……。頭の中はその考えだけで埋め尽くされてしまっていた。





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