真実の奥に。
「あら〜千枝ちゃん、さっきぶりね。ちょうど表向きいい人ぶるのに飽きてたところなんだ〜。おかげでこれから1人で清々しく過ごせるよ!」


周囲の視線が風香に突き刺さる。

風香は全く孤立していた。しかもそれが彼女の望みだったそうだ。


「あんたの嫌味を聞きにきたんじゃない。

その気の狂い様に居ても立ってもいられなかったんだよ!

あんたは犯罪者だ!

八木に謝れ!猫のことを!いや、今までのことをな!」

自分の猫が殺され、本当はそのことを問い詰めたかっただろうに、あたしに聞かれるのを避けるため、メールの事だけを怒った八木を思うとキリキリと胸が痛む。


久しぶりに叫んだ。少しは相手も怯むんじゃないかと思ったが、その表情は意味が分からない、と言っていた。

それも演技だ。しらばっくれようとしているな。


「猫?なにそれ?」

「知らないふりすんじゃないよ!」

「そんなつもりないわよ。本当に何の話をしてるの?」

「………。いいの?ここで大声で言っても?いくらあんたが否定しても皆は疑うかもよ。」

「いいからとっとと言いなよ」

公衆の前で言わせたいのか?

逮捕されたいわけ?

「あんたが…あんたが、八木の猫を殺した!そうでしょ?!」


教室がすうっと静まり返った。


初めて驚く風香を見た。

まだ演技を続ける気か。



< 142 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop