真実の奥に。
当然、八木は驚きで一杯の顔を見せた

それにも関わらずあたしは言葉を発した


「見た?」

「え?」

「これ!見たの?!」


そう言って、今は自分の手元にある紙を指差す


「見てない」

焦ったように首を大きく振って八木は言った

そんな八木の言葉を聞いた瞬間、肩の力がすぅっと抜けた


でもあたしの手は微かに・・・震えていた


それを悟られないように、見覚えのない白い紙をギュッと強く握り締めた



それから沈黙が流れた―――



心の奥底ではわかっている。

自分が何でこんな行動をしたのか。


でもそれを言葉にしたくなかった

だから八木にも言わなかった



八木も何も聞こうとはしなかった

というより、聞かせない雰囲気を自ら造った



「おーい、席着けー」

国語教師のいきなりの呼びかけにあたしたち2人はビクッと肩を震わせた


そのとき、八木と目が合った


さっきまで合わせないようにしていたのに

「あー・・・じゃあな」

気まずそうに八木があたしに一声かけるとそそくさと席へ戻って行った


あたしはただ、彼の背中を見送ることしか出来なかった――



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