【短】─サクラサク─
 どうかしてるよ。

 妖精っていうへんてこりんな生命体と出会って、頭がおかしくなってるんだろうか。

だけど、このサクには感情とか表情とか、そういうのがダイレクトに伝わってくる。


 昔、この家に逃げ込んでいた自分のようだった。



 親のケンカする声って、実は子供には相当堪えるモノ。

それがたとえ痴話喧嘩だとしても、あのときの不安は口なんかじゃ説明できない。


 俺にはそれを共有する兄弟なんていなかった。

唯一のよりどころが、じーちゃんだったから。



 そんな俺が、結婚とか。ましてやいつかは父になるかもしれないなんて。


 あの痛みをさせてしまうんじゃないかと考えれば考えるほど、俺は臆病になっていく。


 たったそれだけのこと。
だけど、それほどのことでもある。



「今日で、オレはいなくなるから」


 サクはずっと一人だったらしい。

そして、それがもう終わりを迎えようとしている。


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