君に愛の唄を
私は自分に言い聞かせると携帯電話を手に持ち、画面に『お兄ちゃん』を映し出した。
──プルルルル…
「あー…ここなぁ?準備できたか?」
「うん、バッチリ」
陸の多分、寝起きの声を耳と心に焼き付ける。
陸、可愛い…
「じゃ、迎いに行くから」
そう言い終わると陸はそそくさと電話を切ってしまった。
私は、耳につけていた携帯を胸にくっつけて陸の優しさを実感する。
陸ん家と私の家、凄く近いのに・・・
そんな、陸の優しさに自然と笑みがこぼれたんだ。
恋するって素敵…
私はその瞬間に、肌身離さず持っているメモ帳に思いついた言葉を書いた。
・・・サラリーマンの曲が完成した瞬間だった。
書き終わったあとに、自然と笑っていることに気がついた。
やっぱり唄が完成することって嬉しいことなんだなぁ。
──プープーッ
その時、不意に車のクラクションが聞こえてきた。
まさか…、と思った私は窓を開けて下を見下ろした。