もう1人の彼氏
今日から新入部員が入ってくる。

ワールドカップの影響か、サッカー部に入部希望する人が最多。


その中でも、一番目立つ子がいた。

髪の毛は、シルバー。

背も高く、カッコイイ。

超遊んでそう。


女の子達はキャーキャー言って見に来ていた。

中には目当てでマネージャー希望入部してきた女の子もいた。




新歓コンパに行ったものの、門限がある為、私は早々と帰ることに。


「おい、誰か送ってけ〜!絵里香お嬢のお帰りだ〜!」
誰かが叫ぶ。


「いいよ、いいよ、皆、飲んでて。
ごめんね〜、先に帰りま〜す!」


いつもなら、ここで、同じゼミの亀ちゃんが
「俺、酒飲んでないから送ってくよ。車だし。」
と言ってくわえていたタバコの火を消しながら立つのに…


「あ…俺が送っていきます。」
と言って立ち上がったのはシルバー頭の新入生だった。



「はっ?新入生歓迎会なんだから主役が帰っちゃダメでしょ?」


「いや、でも夜遅いし。
俺は送っていったらまた戻りますから。」
そう言う後輩を無視して、

「私は大丈夫よ。
亀ちゃ〜ん、送ってってー!」
と叫んだ。


「おぅ。」と返事をして立ち上がった亀ちゃんは、少し不機嫌そう。


「じゃあね、ゆっくりしていってね。
ありがとう!」
そう言って、シルバー頭の後輩にさよならした。




「アイツ、絵里香ちゃんに惚れたナ…」

運転しながら亀ちゃんが言った。


「え?まさか…タイプ全然違うし…」

「絵里香は、男なら誰もが憧れる清楚なお嬢様だから。」

「そうかな…」

「そうだよ。
でなきゃ、俺の車にだって安心して乗らねーよ。
世間知らずのお嬢様。」

「ぷっ(笑)。
確かに、亀ちゃんは一見怖そうだけど、いい人じゃん。」

「男は何するか分かんねぇ。
それだけは覚えといたほうがいいぞ。」

「…亀ちゃん………?」


しばらく沈黙が続いた。




赤信号で停まった。


キスしてきた…


「…か、亀ちゃん………?」
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